映画『鋼鉄の雨』緻密なストーリーとセリフで伝わる分断の現実

大ヒットはしなかったけれど、専門家の評価が高く、何よりチョン・ウソンが格好いい。ネットフリックスで見れるときいて、1ヵ月お試し無料を使って、さっそく見てみました。

『鋼鉄の雨』キャスト・あらすじ

2017年12月公開（韓国）

監督：ヤン・ウソク
ソン・ガンホ主演の『弁護人』の監督さん。『鋼鉄の雨』の原作ウェブマンガの原案を担当。

チョン・ウソン：オム・チョルウ（北の特殊要因）
クァク・ドウォン：クァク・チョルウ（青瓦台安保首席）
キム・ガプス：リ・テハン（北の強硬派）
キム・ウィソン：イ・ウィソン（現大統領）
イ・ギョンヨン：キム・ギョンヨン（次期大統領）

あらすじ
北朝鮮でクーデターが起こり、オム・チョルウは瀕死の「将軍様」を助け韓国の病院に潜伏。北の宣戦布告をめぐって、アメリカを加え先制攻撃か戦争回避かの激論、水面下では「将軍様」の暗殺試図、そしてついに核ミサイルが発射され・・・。

『シュリ』を始め『JSA』や『トンマッコルにようこそ』が、朝鮮半島の南北分断を素材にした名作ベスト３ですが、『鋼鉄の雨』があらたに名作入りしました。

チョン・ウソンとクァク・ドウォンの名演技、特にクァク・ドウォンに惚れました。ストーリーも、「そんなバカな」とか「そりゃないっしょ」という無理な展開がないので、最後まで緊張感たっぷりです。

映画の中で３回出てくるセリフがあります。
분단국가의 국민들은 분단 그 자체보다 분단을 정치적 이득을 위해 이용하는 자들에 의하여 더 고통받는다
分断国家の国民は、分断そのものより分断を政治的利権に利用する者たちによって苦しめられているのだ。

映画『弁護人』も『タクシー運転手』も『1987』も、政府に反対する者は反共分子だといって、政府が国民を弾圧した歴史を扱っていました。その弾圧を正当化させているのが「分断」です。

イム・チョルウが「将軍様」を連れて逃げ込んだ病院の医者のセリフ。
이제껏 북한이 이렇게나 가까이 있었는데도 자각하지 못하고 있었다.
今まで北朝鮮がこんなに近かったということが自覚できていなかった。

北朝鮮は心理的にとても遠く、実際の距離はとても近いことをストレートに表現しています。

そして、韓国における対北政策の対立。
保守陣営の現職大統領は、
북한군을 궤멸시킬 수 있다. 우리에게 언제 이런 좋은 기회가 있었냐
北朝鮮軍を壊滅できる。こんな機会を逃すな。

革新派の次期大統領は、
북한을 최소한 이익의 눈으로라도 보라.
北朝鮮を利益の目で見よう。
（韓国は経済成長も頭打ちで亡国の危機にある。この危機を乗り越えるための対北政策であるべきだ。）

反共一辺倒だった時代の終わりを実感します。

そして、中国の政府要員、朝鮮族中国人であるリ先生のセリフが強烈でした。
クァク・チョルウに「同胞じゃないか、強力してくれ」と言われて、返したセリフ。
한국은 잘 살면 동포고 못 살면 외국인 취급 하지 않았소?
韓国は、金持ちなら同胞、貧乏人には外国人扱いするじゃないか。

『ミッドナイトランナー』や『犯罪都市』などが、朝鮮族中国人を犯罪者イメージで描いていると、強く批判されていたのを思い出します。

扱っているテーマが重たいので、笑える要素がところどころにあるのですが、
そのお笑い担当が、クァク・ドウォン。
中でもびっくりしたのが、「踊るクァク・ドウォン」です。

北朝鮮にもK-popが入っていて、イム・チョルウは娘が好きなG-Dragonを知っているかとクァク・チョルウに尋ねます。
そのシーンが入っている予告編。
画像をクリックすると動画になります。

後半、踊るシーンのメイキングもあります。
クァク・ドウォンさんは、悪役を見ることが多かったのですが、このシーンのおかげでイメージが１８０度変わりました。

よろしかったらお願いします！

韓国語ランキング

自己紹介はこちら

最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さまの韓国語の勉強に少しでもお役にたちますように！