映画『パラサイト(寄生虫)』を見て考えたこと(ネタバレなし)

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世の中夏休みの真っただ中。大学の授業はありませんから私も夏休みではありますが、半分は自営業なので「休み」って基本、ありません。そして自営業で休みがないというのは、仕事があるという意味ですから、ありがたい訳です。「夏休みに見よう!」と思っていたドラマや映画も、見切れないまま…。

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映画『パラサイト』

2019年5月公開(韓国)
4 (2)

カンヌでパルムドールを取った『パラサイト(기생충寄生虫)』。
ポン・ジュノ監督といえば、『殺人の追憶』『グエムル』『オクジャ』など、
社会性が強く、笑いながらも深く考え込んでしまう作品が多いです。

キャスト
父親ギテク:ソン・ガンホ
長男ギウ:チェ・ウシク
長女ギジョン:パク・ソダム
金持ちムングァン:イ・ソンギュ

あらすじ
家族全員が定職にありつけないでいるギテク一家。
長男ギウが、友だちの紹介でパク社長の娘の家庭教師を始める。
ギウは、さらに息子の家庭教師や、運転手、家事手伝いなど、
自分の家族に仕事を作ってやるが…。

なくならない社会の格差

テーマは、格差社会。
ポン・ジュノ監督に限らず、韓国ドラマでも貧富の格差は、
多くの作品の背景に描かれています。

『美しき日々』『相続者たち』などの典型的シンデレラストーリーも、
貧富の格差が大前提です。
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写真:SBSホームページより

室長さん(실장님)
代表さん(대표님)
社長さん(사상님)
肩書で呼ばれる男性たちは、お金はあるけど孤独で、
貧乏な女性は、お金はないけど愛がありました。
貧富の格差に「愛」が立ち向かいます。

『華麗なるリベンジ』『インサイダーたち』などの復讐ものでは、
金持ちは、不正によって富を蓄えた悪者たちで、
社会格差を生んでいるのは、財閥や金持ちによる搾取が原因だ、
だから、奪われたものを取り返す!
貧富の格差に「知恵と力」が立ち向かいます。

『インサイダーたち(내부자들)』
5
写真:ソウル新聞より

さて『寄生虫』は、
お金持ちは、孤独ではないし、不正を行っているわけではありません。
確かに、ギウやギジョンたちの「知恵」が活躍しますが、
貧富の格差に「立ち向かう」のではなく「寄生」します。

ギウたち「貧しい者」が立ち向かったのは・・・
ギウたちが戦った相手というのは・・・

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貧富の格差は、
「愛」や「知恵」で克服したりひっくり返したりできる時代は終わり、
いったん落ちたら、這いあがれないという、
残酷な時代になってしまったのか。

前年にカンヌでパルムドールを取った日本の『万引き家族』も、
血縁ではない繋がりの「家族」を描きましたが、
彼らも、貧富の「貧」に落ちた人たちで、
さらに、社会制度(戸籍や住民票)からはみ出た人たちでした。
いったんはみ出ると、そこから這い上がるのは、ほぼ無理だという現実・・・。

『万引き家族』も『パラサイト』も、
ネット上にも多くの解説が出ています。
いくつか読みましたが、いろいろな視点があって興味深いです。
日本公開が楽しみです。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さまの韓国語の勉強に少しでもお役にたちますように!

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コメント

    • pon
    • 2020年 2月 27日

    ポン・ジュノ監督のインタビューを読みましたが、そこで「この映画は貧乏VS金持ちの対立を描いているのではなく、人と人にはお互いに尊重すべき踏み込んではならない領域があり、それが人間としてのマナーだということを考えてほしい」というような部分がありました。
    その人の持つ臭いは その人の生活や人生を表すものだと。

    やられた!と思いました。
    確かに、その人の持つ臭いについて 私たちは少し遠慮しながら言及しますよね。何気なく言った言葉に、言われたほうは過敏に反応したり。
    社長が臭いに言及したとき、「なんと失礼な人だろうか?でもあるあるだよね。私たちは口に出さないけれど、臭いでいろいろ想像するよね」などと思っていました。
    階段が表す上と下の世界に目を奪われていましたが、さらに監督は踏み込んでいました。

    やはり もう一度見に行かなくては・・・わくわく。
     

      • sokjon2016
      • 2020年 2月 27日

      ponさま
      なるほど、監督さん、そういうお話もされているんですね。
      そういえば、社長さんのセリフに「踏み込まないでくれ」というようなのがあった気がします。
      自分でそう言っていたのに、気がつかずに「臭い」で踏み込んでしまったんですね。
      それだけ「臭い」は「罠」でもあるんでしょうね。
      ポン・ジュノ監督の作品は、最初に見た後は「ひゃ~」という感想しかなく、
      あれこれ検索して、「なるほど~」と少しわかると「もう一度見て見るか」となりますね。
      アカデミー受賞で、まだしばらく上映していてくれそうなので、私も2度目、見てこようかなと考えています。

      • pon
      • 2020年 3月 13日

      2回目を見に行ってきました。初見の時は筋と激しく展開する状況についていくのに精一杯でしたが、落ち着いてみることができました(笑)
      半地下の家の間取りとか、豪邸の階段の位置とか確認し、あのシーンはどうなっていたのかも 解くことができました。
      ポンジュノ監督の脚本は、セリフや表情がのちのちの伏線になっていることを再確認し、やっぱり緻密!カギは臭いですね!

      平日の夜、普段は韓国映画に縁のなさそうな20代の若者がたくさん見に来ていました。感想を言い合っているのを耳ダンボで聞きましたが、急に話が飛びすぎる とか 怖かった とか、 消化しきれない様子でした。

      撮影ロケ地のあひょん洞は、取り壊しが始まっているそうです。ソウルのタルトンネはどんどん高層ビルに建て替わり、街の表情が訪問するたびに様変わりしてますね。いいのか 悪いのか・・・。

        • sokjon2016
        • 2020年 3月 14日

        ponさま
        2度目、ご覧になりましたか!
        ポン・ジュノ監督の作品は、絵解きのようなものの楽しみなんですね。

        K-POPや韓流スターのイメージしか持っていない人々にとって、
        「パラサイト」は衝撃的ですよね。
        私も、他のお客さんの会話目当てにまた行ってみたくなりました(笑)。

        韓国も日本も、久しぶりの場所の様変わりを見ると、
        「昔は~」とつい思い出話になってしまい、
        自分の年を意識することが多くなりました。
        昔の面影がなくなるのは、ちょっと寂しいですよね。

    • pon
    • 2020年 2月 17日

    「金持ちvs貧乏人」じゃなく「貧乏人vsもっと貧乏人」という視点
    かつて 人はなぜ差別をするのか という論議をした時に、ある友人が「人は自分よりも劣るものを見つけて
    自分が優越感に浸って 初めて安心するんだ」と言われて 「なるほど」と考えたことを思い出しました。
    社長さんにはリスペクトでしたよね。

    韓国では文大統領他祝賀ムードだったそうですが、「万引き家族」がカンヌ受賞のとき政府は木で鼻をくくったような官房長の話でしたよね。日本の恥をさらすな とバッシングだったとか。
    現実を直視せず、「きれいだ きれいだ」と言っていたいのでしょうね。

    ポン・ジュノ特集が組まれ、改めてスクリーンで「母なる証明」見てきました。10年前の作品とは思えない新鮮さでした。

      • sokjon2016
      • 2020年 2月 17日

      ponさま
      そうなんですよね、自分より下を見て安心し、
      自分のすぐ上を見て、嫉妬したり攻撃したりするのでしょうね。

      「万引き家族」の時の政府の反応は、大人げないなと思いつつ、
      日本映画は無難な作品ばかりになってしまいそうで、
      ほんとに不安になりました。

      「母なる証明」!
      まだ見てないんです。見たいのですが時間が合わなくて。
      ポン・ジュノ監督に「はずれ」はないようですね。
      うらやましいです~。

    • pon
    • 2020年 2月 13日

    こんにちは
    先週みました。佇まいは韓国的でありながら、内容は世界に共通する問題提起で、見事アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚本賞・長編外国映画賞の4冠に輝きました。納得の受賞です。

    ポン・ジュノ監督の授賞式でのコメント 素晴らしかったです。賛辞を投げられたスコセッシ監督うるうるでしたね。電ノコがあれば、オスカー像を5等分して(ノミネートされた)みんなと分けたい なんて、なんと素敵なコメントでしょう。ウィットに富んだ人なんでしょうね。
    映画も最初はくすくす笑ったりしてユーモアたっぷりでしたが、次第に坂を転がって転がって・・・ 監督がネタバレしないでくださいとお願いしているので、これ以上は口がむずむずしますがやめときます(笑い)

    ソウルの街の構造をほんとうにうまく取り入れていて、坂の上の家と下町の家並みの対比 が象徴的です。人物配置もあるある・・でした。ソン・ガンホさん他役者さん いつもながらうまかった。ひそかに応援していたチェ・ウシクさんががんばっててうれしかった。

    なじみの映画館のオーナーが、この映画の協賛に名を連ねていてびっくり。映画が大ヒットしてたっぷり配当金が配られて、弱小映画館が潤うとさらに喜ばしいのですが。

      • sokjon2016
      • 2020年 2月 13日

      ponさま
      ご覧になりましたか。
      格差をテーマにした映画は他にも多いですが、
      「金持ちvs貧乏人」じゃなくて「貧乏人vsもっと貧乏人」
      という視点が衝撃でしたね。
      ポン・ジュノ監督の作品は伏線とかメタファーが多く、
      マニアが好むスタイルだと思っていましたので、
      アカデミー賞受賞ときいて「大衆受けする!?」とちょっと心配しました。
      何はともあれ、韓国映画が注目されるのは嬉しい限りです。
      コメントありがとうございました!

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