濁るか、濁らないかーチンラーメン?ジンラーメン?
ようやく一つ、仕事が終わりそうです。類書も多い「生活単語集」なのですが、この手の本で一番、頭が痛いのが「カタカナルビ」です。正直、ルビはつけたくないのですが、「カタカナルビがないと売れない」という事情があるそうで、毎回、カタカナルビで苦しむことになります。
カタカナルビの悩みはいくつかありますが、一番は「濁るか、濁らないか」の問題です。
濁るか、濁らないか
数日前にアップした「辛ラーメン」の記事
ここにシナモンさんから質問をいただきました。
진라면はちんらーみょん?じんらーみょん??じるらーみょん???これもどっちでもいーんでしょうか?
確かに!韓国のラーメンは辛ラーメンだけじゃありませんものね(笑)。
辛ラーメンは、[실라면(シルラミョン)]か、[신나면(シンナミョン)]か、
子音ㄴ(n)とㄹ(l)の問題でした。
「チンラーメン」か「ジンラーメン」かの問題は、
平音の、ㄱ(k/g), ㄷ(t/d), ㅂ(p/b), ㅈ(ch/j)が
濁るか濁らないか、という問題です。
진라면は、chin-lamyonと読むか、jin-lamyonと読むのか
没になった「濁る・濁らない」原稿
ここのところ、かかりきりだった仕事が、「生活単語集」というものなのですが、
各章の最後の1ページずつ「コラム」があります。
実は、11個のコラムのうち、ひとつがまさに「濁るか濁らないか」だったのですが、
諸事情で、没になってしまいました。
もったいないので(笑)、大幅に加筆してこちらで紹介します。
没コラム:濁るか、濁らないか
日本語と韓国語では、音を区別する基準が異なります。
どういうことかというと、同じ音を聞いても、その音の聞こえ方が違うのです。
日本語の音の区別は、清音vs濁音
日本語では、タニとダニは意味が違います。清音・濁音で意味が変わります。
カ(蚊)とガ(蛾)も違うものです。
清音のタ、カに対して、ダ、ガを濁音といいます。
音声学的には、
清音のタ[ta]、カ[ka]の子音tやkは、声帯の震えがない「無声音」、
濁音のダ[da]、ガ[ga]の子音dやgは、声帯の震えがある「有声音」。
子音だけを発音するというのは難しいですが、tやkを発音しながら、のどを触ると、
震えがありませんが、
dやgを発音しながら、のどを触ると声帯が震えているのがわかります。
母音は有声音なので、「タta」「ダda」と発音すると両方とも声帯が震えます。
子音だけ発音する、というのは難しいですよね(苦笑)。
ようするに、
日本語は、無声音(タニ)か、有声音(ダニ)で意味の違いが生じます。
でも、韓国語は無清音と有声音の区別をしないので、
無声音の「タニ」も、有声音の「ダニ」も、다니です。
韓国語の音の区別は、平音vs激音
비[pi]は雨で、피phiは血。カタカナで書くとどちらも「ピ」としか書けません。
도끼[tokki]は斧で、토끼[thokki]はウサギ。どちらもカタカナでは「トッキ」です。
ㅂ[p]やㄷ[t]は平音で、ㅍ[ph]やㅌ[th]は激音です。
激音は、強い息の流れがある「有気音」、
平音は、強い息の流れはない「無気音」。
韓国語は、無気音비(雨)と有気音피(血)で意味の違いが生じます。
でも、日本語は無気音と有気音の区別をしないので、
無気音の비も、有気音の피も「ピ」としか書き表せません。
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有声音化という発音ルール
日本語は、無声音か有声音かで意味が変わるのですから、
濁るのか濁らないのか、気になって当然です。
ところが、無声音か有声音かで意味の違いが生じない韓国語では、
濁るか濁らないのか、一向に気になりません。
日本語母語話者は、韓国語を発音するとき、가구(家具)の発音が
「カグ」なのか「ガグ」なのか気になります。
しかし、清音・濁音で意味がかわらない韓国語にとっては、
가구は「カグ」でも「ガク」でもどちらでもいいのです。
ただ、音声学的には、가が「カ」と発音される場合と「ガ」と発音される場合の
条件がちゃんとあります。
無声音が有声音に挟まれるとき、無声音が有声音に同化する
というものです。
家具の가구は[kagu(カグ)]ですが、
籐家具の등가구は、有声音のㅇとㅏに挟まれて、[tung-gagu(トゥンガグ)]になります。
韓国でのローマ字表記
韓国で、韓国語をローマ字表記するとき、
ㄱとㅋを区別するために、
ㄱ(平音)をgに、ㅋ(激音)をkにしています。
実際には、ㄱは[k]と発音されたり、[g]と発音されたりするのですが、
「カグ」も「ガグ」も意味は変わらないので、両方とも[g]にしてしまったのです。
そのかわり、ㅋをㄱと区別します。
さてチンラーメン
単独で発音するときには、
진라면 chin-namyon チンナミョン
前に有声音がくると、例えば、
이 진라면(このチンラーメン)を続けてよむと、이[i]有声音でㅈをはさみますから、
i-jin-namyon イ ジンナミョン
と濁って聞こえます。
でも、韓国では、ㅈとㅊの区別が大事なので、ㅈは全部[j]にくくってしまうため、
진라면のカタカナ表記は、ジンナミョンになっています。
清音と濁音の違いが気になる日本語母語話者にとっては、
「チンラーメン」って聞こえるのになーと、納得いかないんですよね(笑)。
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最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さまの韓国語の勉強に少しでもお役にたちますように!
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コメント
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こんなに明解に説明して貰えたの初めてで
感動してます
ありがとうございます^^*
カタカナ表記に無理があるのはわかってても、ついつい点々あるかないかで判断しちゃいますね。
その前に正しく発音出来るようになりたいです( ̄▽ ̄;)
シナモンさま
喜んでいただけたのが、あまりに嬉しくて、
うかれた勢いで、「濁る濁らない」をアップしました。
本当に、ありがとうございます!
韓国語は、本当に発音が難しいですよね。
ただ、昔と比べると、音楽でもユーチューブでも、
「お手本」が身の回りにたくさんあるので、
とてもよい環境だと思います。
でも逆に、だからこそ疑問も増えるわけで、興味も尽きません。