舞台『SOETSU―韓からくにの白き太陽―』日韓関係が悪い時にこそ!
これは見ておかなければならないかなーと半ば、義務のように感じて見に行ったところ、想定外に面白かったです。
キャストなど
作=長田育恵
演出=丹野郁弓
キャスト
柳 宗悦(やなぎむねよし) 篠田三郎
柳 兼子(やなぎかねこ) 中地美佐子
浅川 巧(あさかわたくみ) 齊藤尊史
浅川伯教(あさかわのりたか 塩田泰久
姜 明珠(カン・ミョンジュ)日色ともゑ
2016年12月3日(土)~18日(日)
三越劇場
時々、韓国語のセリフが飛び出します。
日本語母語話者が「がんばって韓国語しゃべっています」という感じ。
だから聞き取りやすいです。
劇場内で、その韓国語のセリフが聞き取れているのは数人いるかいないかだろう、
なんて思うと、ちょっとしたお得感があります。
韓国語学習者の方に特に! 観劇をお勧めします。
柳宗悦の評伝
柳宗悦といえば民藝運動の人、でしょうか。
日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に美を見出す「民芸運動」。
英語でいうところの「アーツアンドクラフト」。
ウィリアム・モリスのデザイン「イチゴ泥棒」はご存知の方も多いかと。
これのカーテンを買うのが、今の私の夢です♡
話がそれましたが、
柳宗悦が、朝鮮の日用品「白磁」に美を見出し、朝鮮の人々を理解しようとしながら、浅川兄弟や朝鮮の人々と協力して朝鮮民族美術館を設立するまでのお話です。
柳宗悦と朝鮮との関わりにおいて、欠かすことのできないのが浅川巧です。
植民地時代の朝鮮で、民族服パジ・チョゴリを着て過ごしていた日本人として有名です。
2012年には映画にもなりました。
『道~白磁の人~』
公式HP
私は見ていません。
『朝鮮の土となった日本人』という本もあります。
価格:2,700円 |
実は読んでいません。
この本だけ読みました。中学生の研究ノートが本になったものです。
中学生が調べたとは思えない充実ぶりで、しかも読みやすいです。
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ざっくり感想
とても良い作品だと思いました。
まず、登場する朝鮮人が「いろいろ」だったのが良かったです。
宿屋の女将・姜明珠は、朝鮮総督府関係者がお得意様なので、親日的な態度。
柳宗悦の弟子となった南宮壁は、芸術を通じて日本人と理解し合う。
女将の娘の彼氏は、朝鮮独立の過激な運動家で日本人を敵視する。
柳宗悦という人物も「いろいろ」でした。
世論にも影響力をもつ民藝運動家であり、
朝鮮の人々を理解しようという心を持っているのに、
家事や育児、家計をすべて妻に押し付けている。
朝鮮民族美術館の設立に関しても「いろいろ」な立場があります。
総督府の力を借りて、多くの人が利用できるものを作ろうという柳宗悦ら。
権力の力を借りずに作りたい朝鮮の民衆たち。
そもそも日常品を美術館に並べる意味がわからない人々。
民衆へのまなざし
柳宗悦の弟子となった南宮壁が書いた詩には、
「廃墟から始まる、廃墟から立ち上がる」ということが書かれていました。
また、朝鮮白磁の美しさについて、柳宗悦は、
「虐げられたものの悲しみ」がこもっていると言いました。
でも、宿屋の女将・姜明珠が最後に言いました。
「朝鮮人はたくましいから、廃墟になんかならない」
「白磁の美しさが悲しみだと言われることで、朝鮮人は傷ついた」
「白磁の美しさは太陽の明るさだ」
日常品に美を見出しながら、自らの価値観を押し付けていたということなのでしょうね。押し付けられた価値観が「廃墟・悲しみ」だなんて、傷つきます。
「傷つく」と言われた柳宗悦は、さぞかし傷ついたと思います。
舞台の冒頭、柳宗悦が沖縄の方言の研究をしていていました。「日常使いのものにこそ美が存在する」というところはブレずに「日常使い=方言」の大切さをずっと守ってきたようです。
日韓関係が悪い時は特に、日程時代でさえ、柳宗悦や浅川巧のような日本人がいたということは大きな希望です。
東京公演は年内で終わり、年が明けると、全国ツアーになります。
上演日程
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