【30年前】留学生活後半戦 目的が先か、留学が先か、それでも留学してよかった
ソウル高麗大学での留学生活はあっという間に過ぎていきました。
何を学んだのか、何を経験したのか、よくわからないまま、あれよあれよと大事な時間は過ぎていくものです。
部活に参加していた友達
生活に慣れてくると、
下宿の学生たちにちやほやされ、
授業にでていれば勉強している気分になり、
異国生活をしている、という雰囲気に流されて、
なんとなく時間を過ごしていました。
ある日、日本人の留学生仲間から、
「吹奏楽部の発表会があるから、来てくれ」
と呼ばれました。
その日本人の友達が、高麗大学の吹奏楽部に入って、
韓国人の学生たちと部活動に参加していたということを、
その時はじめて知りました。
発表会で、地元の学生たちと一緒に、
演奏して、終われば抱き合い、打ち上げに消えていく、
その友達をみて、心底うらやましく思いました。
図書館の有名人だった友達
少し離れた下宿にも、日本人留学生が何人かいました。
韓国語を教えてくれていた日本語学科の学生が、
「一緒に飲みに行こう、ほかにも日本人を連れてこい」
というので、その少し離れた下宿の日本人に声をかけてみました。
とても頭がよさそうな外見で、普段、接点がなかったので、
これを機に、私自身、その彼女と親しくなりたかったというのもありました。
本人から「ぜひ!」という返事をもらったのですが・・・。
日本語学科の学生から、「どこのどんな人か」と聞かれて、
名前と風貌を話したところ、
「それは、いつも図書館にいる彼女じゃないか。
靴を脱いで、椅子に座っているから目立っているんだよ。
別な人を誘ってくれ」
と、断られてしまいました。
彼女には適当な理由をいっておきましたが、
お蔭で、彼女の下宿に遊びに行ったり、何度か一緒に過ごすことができました。
彼女は「日韓の歴史」が専門で、部屋には韓国で買った本が山のように積んでありました。
今は韓国語の授業だけに出ているけれど、そのうち学部に入りたいとか、
韓国側からの歴史の視点が面白いとか・・・圧倒されました。
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最後の貴重な経験
留学期間も終盤に差し掛かり、急に、「私は何をやっているんだ!」と焦りだしました。
その時、たまたま、日本語学科の学生つながりの知人が、
お芝居に連れて行ってくれました。
地下の薄暗い劇場で、パンソリのような、仮面劇のような、
セリフは何一つ聞き取れなかったので、まったくわかりませんでしたが、
パンフレットと、カセットテープを買いました。
帰宅してから、辞書をひきひき、解説を読むと、
どうやら、韓国の古典芸能をもとに、政治批判の内容を盛り込んだお芝居のようでした。
仮面劇の写真
安東国際仮面劇フェスティバル(韓国語です)
連れて行ってくれた人に、
「きっと聞き取れたら、すごく面白いものだったと思う」と
感想をつたえたところ、
民主化運動から生まれた文化運動の拠点
というところに連れて行ってくれました。
独裁政権に反対する人々の表現活動として、
歌や芝居や版画などを行っているそうです。
ここでも、韓国語が今一つわからず、わいわい集まって活動している様子を、
ひとりぼんやり眺めているだけでした。
そこで見た版画の力強さは、衝撃的でした。
気が付いたこと
どこへ行っても、中途半端な傍観者でいるしかないことに、
イライラしてきました。
このイライラは、韓国語が通じないから、という理由だけでないようです。
吹奏楽部の友達も、
図書館で歴史の本に埋もれていた友達も、
韓国語力は、私と似たようなものでした。
韓国語力が不十分でも、彼らには、
吹奏楽とか、歴史とか、
共通するもの、韓国語以前の知識や技量があった。
私は韓国語を学んで、何をしたいのだろう。
初めて、真剣に考えました。
もう、帰国の日は目の前に迫っていました。
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