舞台『寒花』安重根や植民地支配を扱った、普遍的な人間ドラマ

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1919年の三一独立運動から100年という今年、韓国では植民地時代に生きた人々を描いた映画がいくつか話題になっていますが、日本でも安重根を描いた舞台が3月に上演されるとあって、初日に見に行ってきました。

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文学座『寒花』

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文学座HPより

作:鐘下辰男
演出:西川信廣

2019年3月4日から12日
紀伊国屋サザンシアター

あらすじ(文学座HPより)
明治43年(1910年)、旧南満州・旅順の監獄に、ハルビン駅前で時の韓国統監であった伊藤博文を暗殺した朝鮮人青年・安重根(あん・じゅんぐん)が収監されてくる。 日露戦争の戦勝国として体面を保つため、<無事に>安の死刑を執行すべく派遣されるエリート外務省高官と、監獄の長である典獄、看守長、獄内の情報提供者である模範囚、皮肉な傍観者を気取る監獄医らの確執の中で、統監府から差し向けられた朝鮮語通訳と死刑因・安重根との静かな対話が、ぶつかり合う人間たちの心に揺さぶりをかける。窓外には寒花(雪)が降りしきる。

人生初失態

舞台のチケットは、かなり前に買うので、
観劇当日の予定なんて考えられないんですよね。

三日間こもりきりでキーボードを打ち続け、三日ぶりの外出だったので、
18時半開演なのに、19時開演と勘違いする失態。
それでも、仕事でも待ち合わせでも、余裕もって行動する性質なので、
最初の10分を見逃した程度です。でも痛い。

時々、開演後に職員が照らす懐中電灯に案内されて来る客に、
「決して安くないチケットなのに、なんで遅れるんだ?」
と思っていましたが、まさか自分がそうなるとは。

これから、遅れて入ってくるお客さんに、
みんなそれなりの事情があるんだろう
と暖かい視線を送ろうと思いました。

感想

まだ、消化しきれていないのですが。

公演パンフレットに劇作家の鐘下辰男が、
「歴史」は単なる「題材」だ。~ではなにを書いているのか?
もちろん「現代」である。
と言っているように、ドラマでも映画でもお芝居でも、
歴史モノといっても、作りモノですから
作り手が生きている時代や社会が反映されるものだと思います。

さらに言えば「歴史」そのものも、
過去の出来事を、書き残すその書き手によって変わります。
よく言われる「勝者の歴史」ですね。
書き手の価値観・立ち位置が、否応なく反映されます。

昨日見た『寒花』に出てくる安重根の評価は、
朝鮮では民族の英雄。
日本では殺人者テロリスト。
立つ位置によって、評価が180度変わってしまいます。

「どちら側から見るか」「だれの視線で見るか」
『寒花』は、日韓とか植民地がテーマかと思いきや、
「死」についての見方、でした。

日本の中でも勝ち組・負け組

安重根が伊藤博文を暗殺した背景には、当然、
日本による朝鮮の植民地支配があったわけですが、
日本国内にも、勝者が敗者を支配する構図がありました。

明治維新での勝者と敗者。
舞台は1910年で、明治維新は24年前ですが、親が当事者だったわけです。
勝てば官軍負ければ賊軍

中央から派遣されたエリート外務省高官は、薩長陣営の家柄。
旅順の監獄の職員たちは、東北出身で旅順に飛ばされてきた人たち。

勝ち組の高官が、負け組の旅順に乗り込んできて、
現場のルールを無視しまくる。
負け組だけど、高官にこびへつらう監獄長が、いわゆる
「親日派」(植民地下で日本人にへつらった人々)
にも見えてきます。

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親子の間での正常・異常

『寒花』の主人公は、安重根ではなくて、
彼の通訳士である楠木龍生。

龍生の父は、龍生が幼い時に死に、兄も戦士、
母親と二人で暮らしています、が、
母親は兄の戦士を受け入れられず、正気を失っています。

日本人の監獄職員から、
死刑囚なのに泰然としているのは気が狂っているのだ
と言われる安重根と、

長男が死んだことを信じずに待ち続ける
龍生の母親・・・。

死がもたらす恐怖・解放

安重根は死刑囚。
エリート高官は通訳士に
安重根を変に刺激しないように、生死に関する話題は避けよ
と命じます。

でも安重根と龍生の会話で一番の核心だったのは、
安重根が崖から落ちて死を覚悟したときの経験でした。
龍生にも、母親と死の直前までいった経験があり・・・。

偉い人たちって、
一番大事なことほど避けようとするものなのね。

安重根はクリスチャンでした。
植民地下での民族を思う正義と、信仰に基づく神の存在。
帝国主義が支配する正義の下では監獄暮らしだけど、
その先にある「死」は「解放」なのだと。

ここできっちり、シニカルな監獄医が、
安重根は自分をキリストになぞらえて妄想しているのだ
という「違う見方」を述べます。

裁くものの都合で変わる、正気と狂喜
信じる正義で変わる、死の恐怖と解放
重厚でした。

ただ、監獄という場だから仕方がないとはいえ、
演じ手が男性ばかりで、唯一の女性が「お母さん」。
女に、最も期待されるのが「お母さん」という現実も重厚でした。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さまの韓国語の勉強に少しでもお役にたちますように!

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