舞台『白い花を隠す』慰安婦番組の改ざん圧力を扱ったお芝居

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お芝居のチケットは数か月前に買うので、「芝居なんて行ってる暇ない!!」というタイミングになってしまう悲劇が起こります。それでも、これは見てよかった。初演の2017年に、読売演劇大賞を受賞しているそうです。

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『白い花を隠す』

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2018年8月31日から9月4日
シアターグリーン@池袋

脚本:石原燃
演出:小笠原響

あらすじ
小さなドキュメンタリー制作会社に、あるテレビ番組の企画が持ち込まれる。それは旧日本軍による従軍慰安婦制度を裁く民衆法廷を追う番組だった。スタッフたちは、民衆法廷が持つ歴史的な意義を伝えようと番組製作に取りかかるが、テレビ局側から異例の指示が相次ぎ、番組の改ざんを迫られる。意見を翻す者。沈黙する者。逃げる者。少しずつ見えない圧力に絡め取られていくなかで、残されたディレクターはなにを見たのか。
2001年のNHK番組改変事件を元に描いた、組織に翻弄された人びとと、ある家族の物語。
(PカンパニーHPより)

大人になれよ

慰安婦についてのお話ではなく、放送業界が晒される政治圧力に、立ち向かえるのか!?というお話です。

圧力に対して、
・この先、仕事がもらえなくなるぞ。大人になろうよ。
・家族を食わせるためなんだ、目をつむるより仕方がない。
・私たちだけじゃない、みんな我慢しているんだよ。
・慰安婦の人たちは、結局お金目当てでしょ?
・戦争は、だれの責任でもない、時代が悪かったんだ。

配役のそれぞれが、もっともらしく、
それしか選択肢がないのだと、相手を、自分を、説得します。

こうやって、不正や暴力や戦争が容認されていくんだ
ということが、恐ろしいほどに描かれていました。

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守るべきもの

しかし、制作担当者は、民衆法廷を直接みて、慰安婦本人たちの「お金のためじゃない、人間の尊厳を守るため」という訴えを聞いていますから、

大事な根拠となる部分をカットしたり、
焦点をずらした編集をしたり、
そうして「何が問題か分からない」番組が放送された、ということが納得できません。

右翼の抗議に屈したのか?
もっと大きな力が働いたんじゃないのか?

いち社員の、取材したことをそのまま放送できないことへの危機感を、
真相を明らかにしたいという正義感を、
会社は守ってくれません。

じゃあ、唯一の味方であるはずの家族は?
妻は、家族を守れと、私を愛してないのかと迫ります。

現実はもっとシビア

2001年に実際にあった事件が元になっています。
もちろんお芝居ですから、事実そのままではないけれど、
登場人物の多くは、実在のモデルがいるわけです。

制作会社で改ざんに我慢ならず、会社をやめて告発した人が、
初演時に、このお芝居を見て、

マイルドな表現になっている
(実際の表現は忘れてしまいました)

という感想をもらし、それが人づてに演出家さんの耳に入ったそうです。
お芝居の内容も、かなりシビアなのですが、
現実は芝居より厳しい・・・想像するのもつらいです。

人生、なんの為に

慰安婦だったおばあさんたちは、何のために証言するのか。
首を切られる覚悟で、何のために内部告発するのか。

私は人間なんだ。人間の扱いをしてくれ。
私は記者なんだ。事実を報道させてくれ。

それが、「尊厳を守る」ということだ、と言っています。

尊厳も、平和や人権と同じように、
失ってみて、初めて、大事だったんだと気が付くのだと思います。

失っていない人、失ったことに気が付かない人、
つまり、尊厳が何なのか、分からない人たちには、どんなに叫んでも、届かないかもしれない・・・。
ため息ばかりの新聞記事を読みながら、そんなふうにも思います。でも、

尊厳を回復しようと立ち上がる姿が、それを見る人の尊厳をも回復させる力がある、ということも、このお芝居が強調していることでした。

最後に、
ものすごい力作だなあ、と脚本家さんの名前を調べたら、
脚本家さん石原燃さんは、なんと作家の津島佑子さんの娘さん。
津島佑子さんは、太宰治の娘さん。
うわあああ。

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