月イチ歌舞伎『阿弖流為(アテルイ)』、無理してみてよかった
歌舞伎の舞台を撮影したものを、映画館で見られる「月イチ歌舞伎」。役者さんの表情も細かくみられるし、お値段も舞台見に行くよりはるかに安い。
舞台より映画館
劇団☆新感線のチケットはとれないけれど、「ゲキ×シネ」がある。
歌舞伎は魅力を感じないけれど、見たければ「月イチ歌舞伎」がある。
オペラは高いお金出してハズレだと死にたくなるけど「ライブビューイング」がある。
というわけで、本当は劇場に足を運んでもらうためのサービスなのでしょうけれど、
後部座席で役者さんの表情が見えない舞台より、映画館の方がずっと楽しめます。
写真は公式HPより
新感線より歌舞伎だった
歌舞伎はあまり楽しめない性質なのに、『阿弖流為』を見に行ったのは、
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
なので、「劇団☆新感線」の作品だと勘違いしていたからです。
実際みてみると、かなり歌舞伎っぽく、両方のいいとこどりでした♡
キャスト
豪華です。
阿弖流為:市川染五郎
坂上田村麻呂:中村勘九郎
立烏帽子・鈴鹿:中村七之助
右大臣藤原稀継(マレツグ):坂東彌十郎
蛮甲(バンコウ):市川亀蔵
御霊御前:市村萬次郎
あらすじと感想
坂上田村麻呂が征夷大将軍になって、蝦夷を征討したという昔話をもとにしています。
中村勘九郎に市川染五郎がやられてしまう、ということはあらかじめ「ネタバレ」しているわけですね。
最初の出会い
阿弖流為は、鈴鹿を助けるために神・アラハバキの使いを殺して呪いをかけられ蝦夷に帰れない。
都に現れたニセ蝦夷の盗賊との戦いで、阿弖流為と田村麻呂が出会う。
ニセ蝦夷が襲った立烏帽子が、鈴鹿だった。
田村麻呂(勘九郎)が堤真一に見えたのですが、あとで調べたら、
劇団☆新感線の初演時、堤真一が田村麻呂を演じたとか。
蝦夷での再会
ニセ蝦夷はマレツグらの仕業で、
都の人々に対し蝦夷への憎悪を植え付けるための策略でした。
そんな中で、田村麻呂が征夷大将軍として蝦夷に赴くことに。
俺は「義」は大事にする。しかし「義」が「大義」になったとたん胡散臭くなる。
このセリフはいいですねー。
呪いがかけられているにもかかわらず、阿弖流為は蝦夷を守りたい。
鈴鹿に背中を押されて、二人は蝦夷に戻る。
蝦夷で田村麻呂と阿弖流為は再会し、剣を交えますが、一旦退却。
「蝦夷を守るため」と答えます。
ワンピース、アラバスタ王国護衛兵、ペルを思い出しました。
ビビ「なぜ毎日戦いの訓練をするの?」
ペル「護衛兵ですから……この国をお守りする為です。強くならなければ」
ビビ「誰と戦うの?」
ペル「さァ戦う事より…守るのです」
ビビ「違うの?」
ペル「…目的の違いです」
田村麻呂が罠に嵌る
マレツグが「愛される将軍になれ」と言ったのは、策略だった。
兵隊に愛される田村麻呂が「蝦夷に」殺されたとなれば、
兵士の士気はあがり、都の厭戦気分も払拭できる。
戦のエネルギーは、復讐!!!
ということで、なんと、マレツグが田村麻呂を斬った!
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田村麻呂は生きていた
マレツグに斬られ、崖から落ちた田村麻呂は、
鈴鹿に助けられて、一命を取り留めた。
え?鈴鹿?
鈴鹿は蝦夷の神に呪われ、この崖の下に閉じ込められていた。
では、阿弖流為と一緒にいるあの女は誰??
生き返った田村麻呂は、マレツグの悪事を暴き、
阿弖流為に、和睦を提案。
これ以上、戦を続けたら双方、被害が増えるだけ。
蝦夷の自治を朝廷に認めさせるから、投降しろと。
それはならん!ヤマトに騙されるな!と叫ぶ鈴鹿?いや、
実は、蝦夷の神、アラハバキ!
和睦しよう!となった時に、
阿弖流為は朝廷に裏切られて処刑されるんだよー!
蝦夷の自治なんて認められないんだよー!
と叫びたくなりますが、
かといって、アラハバキの言う通りにしても、
じゃあ、蝦夷全滅するまで戦うのか?
いずれにしろ破滅の道しかないのかと、涙涙でした。
「神」を演じて違和感ないなんて。
七之助に限らず、歌舞伎役者さんは、
動きもきれいだし、演技もうまいし、声もよくとおるし、
さすが!としか言いようがありません。
またまた裏切られた田村麻呂
アラハバキは、阿弖流為は蝦夷を守るための、戦の神だという。
それを聞いて、阿弖流為は苦悩する。戦の神は、戦があってこその神だから。
やはり、俺がいる限り戦はなくならないのか…!!と。
苦悩の末、阿弖流為は田村麻呂を信じて和睦に応じる。
しかし、都に戻ると田村麻呂は捕えられ、
阿弖流為は処刑されることに。
外国からの脅威があり、国を一つにまとめるため
蝦夷という異物を排除しなければならないという。
蝦夷などは最初からいなかったのだ、とも。
異質なものを排除するどころか、
最初からいないものと言い張る、単一民族国家という幻想。
外国からの脅威って、最近よく聞くフレーズですし。
みんな、みたいものしか見ない。信じたいことだけを信じる。
田村麻呂の時代と今と、何も変わってない。
ラスト
捕えられていた田村麻呂は、
没収されていた阿弖流為の剣をもっていって、
二人は、最後の一戦を交える。
阿弖流為はわざと隙をつくって田村麻呂に斬られる。
そして、蝦夷の処遇を帝に約束させる・・・。
いろいろ思うところのある役を、端折ってしまいました。
ものすごく感動したのですが、うまく書けずくやしいです。
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