黒木華主演『書く女』に出てくる朝鮮

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世田谷パブリックシアターで『書く女』をみてきました。

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キャスト・あらすじ(ネタバレあり)

『書く女』
作・演出: 永井 愛
黒木華 くろき はる / 樋口夏子(一葉)
平岳大 ひら たけひろ / 半井桃水 ・・・ 一葉の小説の師
木野花 きの はな / 樋口たき ・・・ 一葉の母
朝倉あき あさくら あき / 樋口くに ・・・ 一葉の妹
他、一葉をとりまく人々

樋口一葉は1872年から1896年までの24年間を生き、代表作「たけくらべ」、「にごりえ」など多くの作品を残しました。
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photo:wikipedia

父親、兄が亡くなり、17歳で戸主となり、母や妹との生活を支えるために、小説を書き始めました。

その時、師事したのが、新聞小説などを書いていた半井桃水
お互い好意をもつものの、一葉は戸主だし(結婚するなら婿をとらねば)、桃水は妻と死別したとき再婚はしないと誓ったとか。
しかし「一葉は桃水の妾になった」という噂がたち、一葉は距離をおくことに。

その後、一葉の小説は話題になるけれど、原稿料というのはわずかで、相変わらず生活は苦しく、「お米がない、夕飯を抜くか、朝食を抜くか」という生活が続きます。

貧しい生活といっても、暗さはなく、
遊郭の近くに住んだ時、近所で遊ぶ子供たちを見て『たけくらべ』を思いついたり、
遊女たちの手紙を代筆しながら、男女の権力関係に思いをはせたり、
作品を掲載している雑誌の若手文士たちから思いを寄せられたり、
そして、会えなくてもずっと恋い慕い続けた半井桃水の存在・・・
などを糧に、作品を書き続けます。

樋口一葉といえば、井上ひさし作『頭痛、肩こり、樋口一葉』が2013年に小泉今日子主演で上演されたものがあり、去年、NHKで放送された時に見ました。
ちなみに、同作は今年8月に永作博美主演で再演されるそうです。

『書く女』も10年ぶりの再演だそうで、初演で一葉を演じたのは寺島しのぶだったとか。
見たかったですねえ。
でも、小泉今日子、永作博美、寺島しのぶ、黒木華、と並べて、
一番和装が似合うのは、黒木華さんかな。とてもよかったです。

チラシは現代風。
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photo:『書く女』パンフレットより

時代背景

1872年 一葉、生まれる。明治維新の5年後です。
1875年 江華島事件。日本と李氏朝鮮との武力衝突。
1876年 日朝修好条規が結ばれる。朝鮮側に不利な不平等条約だった。
1891年 一葉は小説を書き始める。森鴎外が『舞姫』を発表した年。
1894年 日清戦争が起きる。2年後に一葉、亡くなる。

日本が朝鮮を支配しようとする動きが高まっていった時代だったわけですね。
朝鮮の支配は、ロシアや清が日本を攻めてくる前に、日本を守らなくてはならないという理由からでした。

日清戦争のきっかけとなったのは、甲午農民戦争(東学党の乱)
朝鮮の農民が重税や日本の進出に抵抗して起きた農民の反乱です。

これを鎮圧するために、清国と日本が朝鮮半島に出ていって、対立したわけです。ですから、
日清戦争の戦場は朝鮮半島だったんですね。

一葉の母や友達は、軍国主義に染まり、日の丸の旗を振って、大日本帝国万歳を叫んでいました。

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感想

一番、好感をもったというか、共感したのは、一葉の師、半井桃水と、若い文学者たちです。
周囲が「大日本帝国万歳」を叫ぶ雰囲気の中、軍国主義への疑問や不安を論じていました。

桃水は、1881年に「朝日新聞」の通信員として朝鮮に渡り、
朝鮮の人々と仲良く生活し、朝鮮語も教えてもらったと語っています。

桃水の書いた小説『胡沙吹く風』は、そういう経験をもとにしており、
舞台でも桃水は、朝鮮半島の支配をめぐって清との関係が悪化していく中、
日朝清は友好を築かねばならない、と訴えていました。

日清戦争がはじまる!という時には、
「僕によくしてくれた隣人たちは、朝鮮語を教えてくれた彼は、いったいどうなる」
と心配します。
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photo:『書く女』パンフレットより

「大日本帝国万歳!」という雰囲気の中、桃水のような日本人がいて、
その気持ちや主張を、新聞小説に書いていた、という事実が、
なんともうれしいです。

結局は、朝鮮を植民地にし、第二次世界大戦に進んでしまうわけですが、
そういうさ中にも、
「アジアの友好」を思い続けていた人がいた、
というのは覚えておかなければ。

もちろん、朝鮮は、このお芝居のあくまで背景であって、
『書く女』の主なテーマは、「書くこと」でしょうか。

桃水への想いを「厭う恋」と呼び、捨てられない想いを捨てた先に、何が残るのか。
一葉は、「厭う恋」「邪念」といっていましたが、
捨てきれない想いが、書くエネルギーになり、
書くことで、厭う恋も、邪念も昇華させることができた。

死ぬ前最後のセリフが、「次は、何を書こうかな」。
もう少し長生きして、昇華させきったあとの作品を書いていたら、どのようなものだったでしょうね。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さまの韓国語の勉強に少しでもお役にたちますように!

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