悪役チャン・ヒョク『ありふれた悪事』悪者を懲らしめる娯楽映画、ではなかった。

yun-niang-fresh-in-mind-2123308_640

2017年12月に日本で公開される『ありふれた悪事』。チャン・ヒョクが出ているとはいえ、主演じゃないし、民主化以前の韓国社会を描いた映画が、日本でどのくらいお客さんがはいるのでしょうか。

スポンサーリンク

キャストとあらすじ

1
原題:보통사람(普通の人)
監督:キム・ボンハン
警察官ソンジン:ソン・ヒョンジュ
安企部ギュナム:チャン・ヒョク
記者ジェジン: キム・サンホ
ソンジンの妻: ラ・ミラン

あらすじ
警察官ソンジンは、国家安全企画部から、別件で逮捕した男が連続殺人事件犯人であるという証拠書類を渡され、捜査を命じられ、それとともに怪しい大金を受け取ってしまう。ソンジンは独裁政権が国民の目をごまかすためにしくまれたねつ造事件を任されてしまったのだった。
ソンジンの親友であり記者のジェジンが、ねつ造の真相をあばく記事を書こうとする。独裁政権の協力者となってしまったソンジンは、友情とお金の間で悩み続けるが…。

予告編

時代背景

1987年を描いています。
ちょうど私がソウルに留学していた年です。
全斗煥政権で、年末に大統領選挙がありました。

金泳三、金大中を破って、盧泰愚(ノテウ)大統領が誕生したのですが、
この時の選挙で、盧泰愚が掲げたスローガンが、

나, 보통사람입니다. 믿어주세요.
私、普通の人です。信じてください。

邦題は『ありふれた悪事』ですが、原題は『보통사람(普通の人)』。
映画に盧泰愚は出てきませんし、映画は、
普通に生きている人々が権力にからめとられる姿を描いているわけですが、
描かれている1987年を考えると、あのスローガンを思い出します。

普通の警察官ソンジンを演じたソン・ヒョンジュさん。
この映画で、モスクワ映画祭主演男優賞を受賞しました。
2

社会悪の告発もの

最近のヒット作、『ベテラン』や『華麗なるリベンジ』や『インサイダーズ』など、権力の不敗や政財界癒着などを暴く物語が人気です。

これらの作品では、「悪者」は政治家であり、財閥であり、権力者たちでした。
権力者が不正を働き、世の中を不敗させていました。
庶民である刑事や詐欺師やチンピラが、権力者たちを懲らしめるから、爽快感があったわけです。

『ありふれた悪事』もチャンヒョク演じる国家安全企画部室長という権力者が「悪者」ですが、「悪者」を懲らしめるべき庶民の警察官ソンジンは、お金で買収されていまします。

悪役も似合うチャン・ヒョク。
5

足の悪い子供の手術代のため、家族を守るために、
権力や財力に抱き込まれてしまう。
いったん抱き込まれると、相手にどんどん弱みに付け込まれる。
「そっちへ行っちゃいけない」と止めてくれる友達が、うっとうしく感じてしまう。

政治家や財閥が「悪者」の場合は、
やっつけられるのは、まったくの「他人」でした。
世の中を腐らせているのは、自分とは関係のない「悪者」でした。

しかし『ありふれた悪事』では、
私も、どこかで不正・不敗に加担しているのかもしれない
こんな時代にしてしまったのは、私たちなんじゃないか
という問題提起がされている分、重いです。

スポンサーリンク

そういえば、ドイツ・ナチスの戦犯を扱った
映画「ハンナ・アーレント」では、
戦犯アイヒマンの裁判を傍聴に立ち会ったハンナ・アーレントが、
「アイヒマンは普通の人だ」と「悪の凡庸さ」を主張しました。
だから「考えろ、考えろ」と、
「人間は考えることで強くなる」とも言っていたのでした。

ソンジンの妻

警察官ソンジンの妻を演じたのがラ・ミランさんでした。
3
明るく、コメディな役柄を多く見てきたので、
重苦しい内容の中で、明るさ担当なのかと思ったら、

聴覚障害で話すことができなくて、
だから、とても大人しくて、夫に頼り従う女性でした。

そういえば、
『ベテラン』『華麗なるリベンジ』『弁護人』『マスター』
みんな男ばかりですよね。
確かに、ストーリー以前に、「韓流スター」というイケメンを見たい
というお客さんが多いでしょうし、私もそうです。

『ありふれた悪事』は、1987年という具体的な時代背景が、
私も同じ時間の韓国を体験しているので、
もっと女性もいたし、もっと女性は元気だった
と、気が付きました。

韓国社会も日本と同じように、家父長的で、女性が生きずらい社会ではありますが、「民主化」を求める声の中に「男女間の民主化」も含まれていたのにな、
と残念に思います。

「太陽の末裔」の北の兵士アン上尉も、なかなか深い役どころで出ています。
6

警察官サンジンの親友、記者役にキム・サンホさん。
4

30年前の、韓国のお話ですが、時代背景と関係なく、
芸達者な役者さんがそろって、見ごたえのある作品です。

スポンサーリンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメント

    • NICO
    • 2017年 11月 18日

    こんにちは(´∀`)
    久しぶりにコメントさせて頂きます。

    この映画、シネマート心斎橋でも上映されるので、友達と行こうと言っていたのですが、
    諸事情により、たぶん行けないかもしれないんですよね~とても残念で…
    でも、行こうと盛り上がったのは、私も友達もチャン・ヒョクさんではなく、
    ソン・ヒョンジュさんが好きだから、ですね~(´艸`)
    二人ともどちらかというと、イケメンよりもアジョッシ、そしてストーリー重視な方ですかねㅎㅎ
    私はあと、キム・サンホさんもラ・ミランさんも好きなので見逃せない!と思ったのですが…。
    こちらを読んで、やっぱり大画面で観たい気がふつふつと再燃しています。

    ソン・ヒョンジュさん、本当は普通の人のはずなんだけど、ある事件から泥沼にはまってしまう、
    というのが、映画『悪のクロニクル』とちょっと似ている気もします。
    ヒョンジュさんご本人を見たこともあるからか、ヒョンジュさんが出演していると無条件に観たくなりますね。
    魅せる俳優さんですよね~
    でも『悪のクロニクル』では、パク・ソジュンさんもとてもいい役なんですよ。
    コミカルな役が多いソジュンさんですが、この映画では笑いなしで、ソジュンさん本来の演技力の高さを改めて感じられる作品だったと思います。
    イケメン重視じゃないと言いつつ、最近映画館へ観に行ったのは、『ワン・ディ』だったり『空と風と星の詩人』だったりするので、あまり説得力がないでしょうか?(´艸`)
    だけどもっと濃い、アジョッシ主演の韓国映画の名作も日本でも上映されるといいのにな~と思います。

    韓国映画好きの方は、ソン・ヒョンジュさんのファンも多いし、チャン・ヒョクさんファンの方ももちろん行くだろうし、それこそストーリーよりも出演者で映画館に足を運ぶ方も多いと思いますので、日本での興行もそこそこに行くようにも思います。
    石田さまのように、背景を知って見ればさらに色んなことに気付けて、考えることも多くなるでしょうけれど、映画自体は面白く感じられるんだろうな~と思います。

      • sokjon2016
      • 2017年 11月 18日

      NICO様
      コメント、ありがとうございます!
      夏が終わると、年末に向けて転がり落ちるように、せわしなくなりますね。
      私も映画館に行けない日々が続いて、ストレスです~。
      ぜひ、映画館にいらっしゃれますように!
      ソン・ヒョンジュさん、地味に存在感ありますよね。

      私もアジョッシ俳優さんが好きです!
      アン・ソンギ、ソン・ガンホの天才っぷりに惚れますし、
      キム・ユンソクの何とも言えない色気とか。

      「ありふれた悪事」が描いていいる1987年の、
      そのものずばりのタイトル「1987」という映画が、韓国で12月に公開されるそうです。
      またまた地味な内容だろうに、
      それこそ、キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジンら
      主演はれる俳優さんがこれだけ出るので、日本に来るといいなと期待しています。
      1987年から30年。
      「出来事」を分析して意味を理解し、芸術作品にまで消化するまで、
      30年という時間がかかるということなのかと、しみじみ考えています。
      「悪のクロニクル」も見逃してしまってそれっきりです。
      見たい映画はたくさんあるのですが、これから年末、年度末、
      しばらく、走り続けなければなりません。
      忙しくて寒い時期ですが、温かくお過ごしくださいませ。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

2017年12月
« 11月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
ページ上部へ戻る