セウォル号沈没の真相究明ドキュメンタリー映画『その日、その海』上映会がありました。

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2018年8月18日、中野駅近くのなかのZEROホールで行われた『その日、その海』の上映会に行ってきました。直前に主催者から「まだ満席になっていません!」というメールが送られてきましたが、当日、1000人以上はいるホールは満席でした。
上映後の「監督と製作者のトーク」というのが、実に興味深かったです。

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セウォル号沈没を扱った映画

2014年4月16日、299人の死者(不明者5名)の犠牲を出したセウォル号沈没事件。
以前、『ダイビング・ベル』をという映画を紹介しましたが、この映画では、「救助活動はちゃんと行われたのか」ということがテーマでした。

今回見た『その日、その海』は、なぜ沈没したのか、政府発表の沈没原因は正しいのか、ということを掘り下げたドキュメンタリーです
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この事件に関しては、結構多くの映画が作られています。
死んだ人が最後に立ち寄るといわれている島を舞台に描かれた『눈꺼풀(まぶた)』では、セウォル号犠牲者の痛みと悲しみの物語で、鎮魂がテーマです。
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4人の監督によるオムニバス『공동의 기억:트라우마(共同の記憶:トラウマ)』は、事故の生存者や遺族、沈没現場などの記憶のドキュメンタリーです。
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沈没事件への向き合い方は、いろいろありますが、『その日、その海』は、感情や感傷をはさまず、「沈没原因の究明」の一点に向けて、淡々した作業の過程が描かれています。
予告編

セウォル号沈没の原因

『その日、その海』は、事件当日、現場近くにいた船の船長がセウォル号を目撃した様子の再現から始まります。

海を航海する船は、航路を発信し記録する装置があり、セウォル号の航路と沈没位置も公に発表されています。

しかし、改めて航路記録をたどっていくと、発表された航路と沈没場所が捏造されていることが分かってきます。

政府発表の沈没原因は、船体の欠陥、荷物の積みすぎと言われていて、荷物が固定されていなかったために、片方にずれて、重さのバランスが取れず船が傾いた、という説明でした。

それに対し『その日、その海』が出したひとつの仮説は、
船が島に近づきすぎて、海底が浅い部分に錨が引っかかったことにより、船が傾いた
というものでした。

上映後のスペシャルトーク

この映画はジャーナリストのキム・オジュンさんが、キム・ジヨン監督に「撮ってくれ」と頼んで作られたそうです。
そのお二人が来日して、上映後にお話をしてくれました。

お話の内容も興味深かったのですが、ちょっと驚いたのは、
お二人はもちろん韓国語で話し、そのあとに日本語通訳がはいります。
通訳される前の時点で、会場に笑いや拍手の反応があったこと。
会場の半数くらい?が韓国語を理解しているような感じでした。

周辺の会話から、日本在住の韓国人も多かったのが分かりますが、それ以外にも韓国語を理解する日本語ネイティブも相当数いるんだな、という印象を受けました。

こういう場の通訳さんは、本当にプレッシャーですよね…。

さて、本題のトーク内容ですが、
まず、船舶自動識別装置(AIS)による航路記録の解読を、キム・ジヨン監督が独学で行ったというのです。真相解明への執念、ですね。
航路記録は、数字や記号の羅列なのですが、周辺の資料をもとに、数字の塊の最初の数字がその時点の船の速度を表す、などを割り出していったわけです。

また、制作過程で、「何者かによる妨害」が続いたとか。
あらゆるデータが入っているパソコンを壊されたり、撮影機材を壊されたり…。

監督と製作者、ふたりのインタビューでしたが、ほとんどキム・オジュンさんがしゃべりました。
「ニュース工場」という番組を持っていて、韓国社会でも影響力の強いジャーナリストです。弁が立つんですよね。
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その一方で、キム・ジヨン監督は、AISを独学で解析するほどの、コツコツ努力型なのでしょう。口は動かさず、頭と手をもくもくと動かすタイプなのでしょう。
この日も、考えて考えて考えて、ようやく一言しゃべっても、キム・オジュンさんに「それ、僕がもうしゃべったよ」とからかわれてしまう。

最高のコンビネーションでした。

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なぜ記録が捏造されたのか

誰もが思う疑問です。
沈没事故当時の政権は、パク・クネによる保守政権でした。
セウォル号本体に原因があった「単純事故」で終わらせたかった。
政府に責任や批判がくることを避けたかった。

その後、政権が変わり、セウォル号の船体の引き上げもされました。
でも事故調査委員会の人々はそのままです。
自分たちがいったん出した結論を覆すわけにはいかない。

保身とメンツが、真相究明を妨げているようです。

ムン・ジェイン政権下で、事故調査委員会のメンバーが刷新されることが、真相究明への第一歩でしょう。

ナレーションが俳優チョン・ウソン

『その日、その海』の一番の話題は、チョン・ウソンがナレーションを務めている、ということかもしれません。

映画『鋼鉄の雨』のチョン・ウソン
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スペシャルトーク後の「会場からの質問」で手をあげた女性は、
大阪から来ました。正直、チョン・ウソンさん目当てで来ました。
来日されなくて、残念です。
と言って、会場を笑わせました。

これに対し、キム・オジュンさんが、
だからチョン・ウソンさんを来日させなかった。彼が一緒だと、我々が(注目されず)悲しくなるから、
といって、笑いで返しました。

みんなが「無理、無理」というなか、キム・オジュンさんがチョン・ウソンさんに直接電話を掛けたそうです。
詳しい説明抜きで、「真相究明の映画だ。ナレーションしてください」と頼んだら「しましょう」と一言でOKしてくれたとか。しかも、無償!

その後、チョン・ウソンさんのマネージャーから電話がかかってきたけれど、キム・オジュンさんは、無視したそうです(笑)。

どうしても政治的(政権批判)な内容になってしまうから、人気俳優なら当然、避けたいところでしょう。
でもチョン・ウソンさんは国連の難民親善大使だったり、テレビ局のストライキを応援したり、顔だけでない格好良さを見せてくれる人です。

18時半に映画が始まり、2時間弱。
体調もイマイチだったので、帰ろうかと思いましたが、
トークにも参加して本当に良かったです。楽しかったです。

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