鄭義信『赤道の下のマクベス』名もなき庶民が生きてきた記録

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朝鮮人BC級戦犯の話。果てしなく救いがなくて思いテーマなのに、新国立劇場は、ほぼ満席でした。

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キャスト・ストーリー

赤道の下のマクベス
作・演出:鄭義信
2018年3月6日から25日
新国立劇場・小劇場

朴南星(清本南星):池内博之
黒田直次郎:平田満
李文平(清原文平):尾上寛之
山形武雄:浅野雅博
小西正蔵:木津誠之
金春吉(金田春吉):丸山厚人
ナラヤナン:チョウ・ヨンホ
看守A:岩男海史
看守B:中西良介

あらすじ
1947年、シンガポールのチャンギ刑務所。
捕虜虐待の罪で死刑判決を受けた戦犯たち6人がおり、そのうち3人は朝鮮人である。囲碁をうったり、歌ったりしながら、死刑執行の日を待っている。
鄭義信が関西式ギャグで、果てしなく暗く思い刑務所を描きます。
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朴南星

役者になりたかった青年で、チャンギ刑務所にはシェイクスピア「マクベス」の台本を持ち込んでいる。わが身を嘆くより、どうせなら笑って楽しく時間を過ごそうとする。上官の命令に逆らえないとはいえ、捕虜に暴力をふるったのは俺たちだ、とも言う。

黒田直次郎

日本人だが、朝鮮人の南星と囲碁を打ったり、仲間割れを執り成したり仲良く過ごす。泥沼の中の行軍や現地の民間人を襲撃した経験に苦しんでいる。この戦争に大義などなかったと悔やむ。

李文平

たった一人の肉親である母親に、自分が戦犯であることを知らすことができずに泣いている。その辛さや悔しさややるせなさを、手紙に書きのこしている。

山形武雄

上官として、捕虜を殴れと命令していた立場。ほかの収容者と交わることをせず、最後まで五族協和、八紘一宇という戦争の大義を信じ、軍人としての誇りを保とうとする。

小西正蔵

山形と同郷で、山形を誇りに思っている。自分は無実で、捕虜が証言を間違えただけだからそのうち無実が証明されると信じている。

金春吉

いったん死刑が取り消されて解放されたが、また捕まって死刑宣告を受け、チャンギ刑務所に戻ってきた。そしてまた減刑され・・・。命をもてあそばれているという怒り、捕虜虐待の命令を下した山形への怒りなどを抑えて、無念の死を遂げた仲間の思いを伝えるために、生き残る。

感想

鄭義信さんの作品がとても好きです。在日朝鮮人を通した日本の近現代史を描いて、商業的にも成功するって、すごいなあと。

一昨年、新国立劇場であった鄭義信三部作、
「パーマ屋すみれ」「たとえば野に咲く花のように」「焼肉ドラゴン」
どれも、号泣しました。

「焼肉ドラゴン」は映画になりますね。真木よう子、井上真央、大泉洋!
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鄭義信さんの作品は、
戦後の経済成長の影の部分(炭鉱の事故や閉鎖、開発のための強制撤去、朝鮮戦争など)で、在日朝鮮人たちが都合よく消費されて、捨てられてきた・・・。
同じ人間だけれど、生まれてきた「場所」と「時代」によって、こんな運命を背負わされるのか、というものが多いです。

「赤道の下のマクベス」では、
植民地化で日本人として徴兵された人々を描いてします。
日本人上官の命令のもと、
戦場で命を落としたり、負傷したり、戦犯となったり。

終戦後は、国籍が朝鮮に戻ったために、
日本の政府は、軍人恩給の対象からもはずしています。
さらに、韓国社会でも、ながらく「親日派」として差別もありました。

これはおかしいんじゃないか
という声に、
韓国政府は2006年に朝鮮人BC級戦犯の名誉回復を宣言し、
日本政府に対し、軍人恩給などの補償を求める裁判が起こされました。

制度的な、公式的な解決はもちろん必要ですが、
どうしても「朝鮮人BC級戦犯」というくくりで語られてしまう。

鄭義信さんの作品は、そうやって括られてしまう人々を、
南星や文平、春吉という名前をもつ具体的な人間の人生として
語りなおしてくれます。

歴史的な出来事を記録し伝えるという作業には、
名前と顔をもつ人間のイメージが必要だと。

誰のために、何のために

元夫は韓国からの留学生だったのですが、
師事していた先生のお連れ合いの先生が、朝鮮人BC級戦犯を研究していました。その時に初めてこの問題を知り、とにかく、そんな理不尽なことがあるのか、と驚きました。

内海愛子先生の、「朝鮮人BC級戦犯の記録」岩波現代文庫

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感想(0件)

「赤道の下のマクベス」のパンフレットにも解説を書いていらっしゃいます。
その中で、朝鮮人BC級戦犯だった一人が語ったことばを紹介しています。

何のために絞首刑になったのか、その理由もなければ、自分に対する言い訳もできない、これが一番つらいことだ。

戦争って、そうなんですね。

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