『光の国から僕らのために』~私が授業でウルトラマンを使う理由~

IMG_0005

時々、韓国語の授業で、『帰ってきたウルトラマン』第33話を教室で見ることがあります。



公演概要

2016年2月10日(水)~21日(日)
紀伊國屋サザンシアター

脚本:畑澤聖悟
演出:丹野郁弓
金城哲夫:齊藤尊史
上原正三:みやざこ夏穂
円谷一:千葉茂則

公演パンフレット
IMG_2484

あらすじ

沖縄の本土復帰は1972年。ウルトラマン放送開始は1966年。ウルトラマン初期の脚本家二人は、沖縄出身で、つまり東京の円谷プロにくるためにはパスポートが必要な時代だった。

沖縄出身の金城哲夫は、縁あって円谷英二率いる円谷プロダクションに入社する。時代はテレビ創成期、金城は20代の若さで「ウルトラQ」の脚本家に抜擢される。同郷の上原正三を引き入れ、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などを世に送り出す。
金城は戦争体験を語らず、底抜けに明るいが、上原は脚本にも戦争の影をしのばせ、東京生活でも「琉球人」への差別を経験する。

ウルトラマン人気は高まっても、会社は借金を抱え、1969年、金城は突然沖縄へ帰る。1975年の沖縄海洋博で、金城は開閉会式の演出を担当するが、沖縄と本土との軋轢に苦しみ、アルコールに溺れるようになる・・・。

公演パンフレット
IMG_2485

ざっくり感想

客席は「ザ・おじさん」で埋まっていました。
あらすじでもわかるように、「ウルトラマン制作秘話」ではなく、沖縄と日本のゆがんだ関係が中心にあります。

沖縄の米軍基地 ⇒ 辺野古
海洋博で地元がこうむった被害 ⇒ オリンピック
本土で下宿を断られるなどの差別 ⇒ ヘイトスピーチ

などなど、「今」に繋がるテーマでした。
解決が難しい重たい現実を前に、
「俺は沖縄と日本の懸け橋になるんだー!」と叫ぶ金城・・・

純粋すぎてこの世の中に適応できなかったんだなあ、
だから、ウルトラマンを生み出せたんだなあ、
というのが最初の感想でした。

ちょっと残念

ただ・・・、どれも少し検索すれば出てくる「事実」です。
たとえば、ウィキペディアの「沖縄海洋博」には、

「海洋博に合わせて行なわれた開発は、赤土の海への流出を招き、サンゴ礁に被害を与えるという海洋汚染も引き起こした。」

沖縄の漁師たちのセリフの内容、そのままじゃないか。
金城の業績にしろ、沖縄と本土の関係にしろ、金城と上原とのやり取りにしろ、
「事実」をつなぎ合わせただけという印象です。

せっかく「お芝居」なのだから、「きっとこうだったんだろう」という「創作」があってもよかったと思います。
もちろん、作り手の思い入れが感じられるような。

もっとも、パンフレットに上原正三さんが寄稿されているし、金城本人の写真も使われているし、
関係者がまだあちこちで目を光らせているわけですから、大胆な冒険はできないでしょうね。

上原正三さんは、こんな本も出しています。

韓国との関係

劇中、上原のセリフに、
「東京で下宿を探すと、朝鮮人と琉球人はお断りといわれる」
というものがあります。

圧倒的多数のヤマトンチューの前に、
ウチナンチューと朝鮮人は、ともにマイノリティーとして差別されていた。

差別されるマイノリティーの視点をもっているから、同じマイノリティーの
朝鮮人やアイヌ民族への共感があったと思います。

「ノンマルトの使者」

超有名な、ウルトラセブン第42話「ノンマルトの使者」は金城の脚本です。
海底開発が進む海の下に、ノンマルトが住んでいた。
地球人より先に地球に住んでいるというノンマルト。
ノンマルトにしてみれば、今の人類が侵略者になるわけです。
しかし、ウルトラ警備隊はノンマルトの海底都市を爆破してしまう。

劇中、金城のファンだという青年が、
「ノンマルトの使者は、日米安保ですね、ノンマルトは沖縄だ」
といい、金城がきょとんとする場面があります。

「金城には政治的意図はなく、作品に沖縄を投影することもなかった」
といわれます。でも、だからこそ、意図しないからこそ、

「ノンマルトと同じ宇宙人の立場」「地球を守る使命」という葛藤、
強者が弱者を支配する理不尽さへの反感、
というものが、「ダダ漏れ」してしまっているのではないかと思います。

スポンサーリンク

「怪獣使いと少年」

これも超有名な、帰ってきたウルトラマン第33話「怪獣使いと少年」は上原の作品です。
工場地帯の廃屋に「川辺に穴を掘る少年」がいる。
近所の不良少年たちがちょっかいだして、超能力で撃退されたことから、
「少年は宇宙人だ」という噂が立ち、町ぐるみでいじめがはじまる。
実は、少年は「金山」と名乗る老人をかくまっており、その老人はメイツ星人だった。
宇宙人への不安が高まり、町民たちが暴徒と化し、老人が殺された・・・。

工場地帯は在日朝鮮人の集住地域である川崎をほうふつさせ、
いじめにあう少年は朝鮮人っぽい顔立ちで、
メイツ星人が名乗る「金山」は、在日の人たちがよく使う通称名。
暴徒化する町民たちは、関東大震災時の朝鮮人虐殺か。

ここまでそろうと、「在日朝鮮人をモチーフとした作品」といわれるのも無理はありません。
芝居でこの作品は出てきませんでしたが、
上原が差別体験や、戦争体験を語る姿をみると、
「怪獣使いと少年」を書かざるを得なかったんだなあと思いました。

「怪獣使いと少年」という本もあります。

授業で「帰ってきたウルトラマン」

時々、「怪獣使いと少年」を授業で見せることがあります。
韓国語を学びながら、日韓関係にも目を向けてほしいと思うからです。

韓流ブーム最盛期には、「こんな時代もあったのだ」と、
ヘイトスピーチが問題の時は「昔は社会全体がヘイトだったのだ」
ということを伝えたくて、視聴します。

学生さんたちの感想は、

少年に対するいじめの描写がすさまじい。
ウルトラマンはこんなに暗い話だったとは意外。
子供番組なのに難しすぎる。
フィクションとはいえ、衝撃的。

など、少し「受け止めきれない」という印象です。
それでも「ウルトラマンの世界は深い」ということは伝わるようです。

ドラマは今までにも何度か作られていますね。

スポンサーリンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメントは利用できません。
2017年10月
« 9月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  
ページ上部へ戻る